『弱さの情報公開』:Ⅱコリントの信徒への手紙12章5−10節

北京冬季五輪で銀メダルに輝いたカーリング女子の吉田知奈美選手。試合後の会見では「チームで大事にしてきたのは『弱さの情報公開』」と語った。この言葉は当事者研究で知られている向谷地生良さんの言葉で、北海道にある「べてるの家」の活動理念のひとつである。彼女の座右の銘である「安心して絶望できる人生」もそうだ。向谷地さんは浦河教会の会員で、100人以上の精神的疾患を経験した当事者らに住まいと作業場を提供し、共同生活をしながら町おこしに貢献している。施設では「弱さ」は克服すべきもの、強さに向かうプロセスではない。「弱さ」そのものに意味があり、価値を見出す生き方を選び取る。「強さ」や「正しさ」に支配された価値観の中で「弱さ」に向き合い、それを公開して互いの絆にしていくこと。それが尊ばれるのである。吉田選手は「メンタルは強化しなくていい。弱さでつながっているチームだから」とも語った。試合前プレッシャーで弱音をはくメンバーに「もっと緊張していいよ」と声を掛け、自らも仲間を頼る。互いの弱さ隠さず共有することが大事にされた。使徒パウロは主によって「弱さ」の中にある恵みに気付かされ、「弱さ」「無力さ」の価値を見出すに至った。彼も弱さの情報公開者である。教会も「強さ」を披瀝し合うのではなく、弱さを誇り繋がる群れである。(2022/6/12)

 

2022/6/12(日)礼拝講壇生花 by Ishimaru