「アンデルセンと母の祈り」詩編55編2-3節.23節

キリストは飼い葉桶に寝かされたが、童話の王様アンデルセンは棺桶に寝かされた。家は貧しく、譲り受けた棺桶でベッドが作られたのだ。いじめや差別を受けた青春時代、幾度も失恋の苦悩を味わい、誰とも結ばれなかった。父方の家系は精神的な病いを患う傾向があり、祖父も父も晩年に発病し亡くなっている。アンデルセンは将来自分も遺伝するのでは?と不安を覚えていた。繊細で心配性。寝ている間に死んだと勘違いされ埋葬された人の噂話を聞いて以来、寝る時には「死んでいません」というメモを枕元に貼ったとも伝えられる。困窮を極め、評価されず、孤独な日々を過ごしたアンデルセン。しかし、彼は「わたしの生涯は、波乱に富んだ幸福な一生であった。それはさながら一編の美しいメルヘンである」と語っている。彼は、不幸せに思える出来事を幸せに変換して物事を受け取る力と、どんな体験をもそれを生かして物語を創作し、童話を紡ぎ出すふしぎな力を神から与えられていた。彼の自伝を読むと、神への信仰が与えられていたことがわかる。それは母親の影響が大きかったのであろう。アンデルセンは「私の母に」という手紙を残している。「幼子のたよりない身を、あなたは母の身に抱いて、私の唇に「神さま」とつぶやくことを教えてくれました。・・・お母さん、私のすべての幸運は、ひとえにあなたのお陰なのです。・・・あなたが息子のために熱心に祈ってくださったため、善き主はその敬虔な祈りをきかれたのです!」アンデルセンの母は文盲で私生児であったという。北欧の地で洗濯婦として働き、晩年はアルコール中毒に・・。凍てつく寒さの中、酒で身体を温めざるを得なかったのだろう。しかし彼女は偉大な遺産を息子に残した。信仰と祈りという最高の宝を。(2023.5.14母の日)

 


2023.5.14(日)礼拝講壇生花 by YOSHIKO