『優先すべきもの』:ルカによる福音書6章6−11節

聖書の戒めの底辺にあるのは個人の命の尊重。とりわけ弱くされた命に対する神の慈しみである。主イエスは何よりも目の前の命を優先し、大事にされた。「命のビザ」で知られる杉原千畝、彼は第二次世界大戦中、ナチスによるユダヤ人狩から逃れてきた難民約6000人以上を救った。だが彼の手記によると一晩中、葛藤したようである。連日リトアニアの日本領事館にビザを求めて押し寄せる人たち。東京からの回答は「拒否せよ」。違反すれば昇進もなく処罰も免れない。だれもが政府に従うところ千畝は苦悶の末、ついに「命」を優先する。彼は、キリスト者として常に神に促された「愛と人道」の精神があった。「外交官としては間違ったかもしれないか、人間としては当然のことをした」と述懐している。「安息日」の戒めはユダヤのアイディンティティーと言われ、現在も安息日の規定がある。「安息日」は労働禁止であるが、「特例」がある。それは「人命救助」の場合だ。ユダヤでは現在も特例として救急車の出動などは許可される。しかし、「軍事行動」も特例という。律法の解釈を巡って本末転倒していたキリストの時代、今も主イエスの言葉がイスラエルに響く。「そこで、イエスは言われた。『あなたたちに尋ねたい。安息日に律法で許されているのは、善を行うことか、悪を行うことか。命を救うことか、滅ぼすことか。』ルカによる福音書6章9節(2024.11.10)