『隠された真理が輝く時』:ルカによる福音書8章16-21節

芥川賞受賞作『ゲーテはすべてを言った』の著者・鈴木結生さんは、牧師を父にもつ幼少期からの文学青年である。高校2年でシェイクスピアの「不死鳥と雉鳩」を翻訳し、年間1000冊を読破するという彼の本に対する原体験は「聖書」であり、小説を書くきっかけは東日本大震災の体験が影響したようである。福島で育った彼は原発事故の混乱の中で、情報の錯綜や言葉への不信に直面した。それでも「信じるべきもの」や「正しい言葉」を問い続け、福島での思い出や経験を隠さず形にしたいと願い、それが創作への原動力となったようだ。主イエスは、真理は隠されても必ず明らかになると語られた。日本文化は和を重んじる一方で、波風を立てないために不正やいじめが見過ごされたり、都合の悪い事実を隠蔽するというというような悪き闇の力が現実社会にある。「和」と「真理」は対立するように見えるが、聖書は愛によってこそ調和することを示す。愛なき真理は鋭い剣となり、真理なき愛は曖昧な優しさとなって人を成長させない。真の「和」は衝突を避けることではなく、真理に基づいた関係の回復を意味するはずである。イエスは愛をもって時に沈黙され、語るべき時には大胆に真理を証した。われらは真理の言葉を内に宿している。それは決して隠れたままではいない。その光はどんなに隠そうとしても輝こうとする。たとえ弱さの中にあっても偉大な神の恵みと愛の光がそこから輝き出す。和は優しさから生まれ、真理は勇気から生まれる。そして愛はその優しさと勇気を一つにする。本当の和を築くために、真理の言葉を証しする者でありたい(2025.2.23)