『かまわないでくれ!?』:ルカによる福音書8章26-39節

世界は今、一段と分断の道へと進んでいるように思う。共感を土台として同じ価値観を持つ人との繋がりを強める一方、そうでない人とは関係を切る、あるいは関わらないほうがよいと。主イエスは、家族から引き離され、長い間社会から放置されていたひとり孤立する人と出会われた。「かまわないでくれ」と叫ぶ彼の名をイエスは尋ねる。見ず知らずの人、目の前にいても将来的に繋がりそうもない人の名前をわざわざ知る必要はない。名を尋ねる目的は、相手とこれから関わろうとする意思表示だ。「レギオン(軍団)」と名乗るこの人は、大勢の悪霊に憑かれていたと福音記者は記している。創造主である神を拒み、人間同士の関係を引き裂く諸悪の力は、人を孤立と絶望へと向かわせる。この人の「かまわないでくれ」は、悪霊の声であって、本心は「助けて」の叫びなのかもしれない。イエスは、この人を悪き支配から解放して再び家族のもとへと帰し、これからは孤立ではなく、自分に起こった救いの出来事を出会う人たちに証して多くの人と繋がる関係へと送り出された。われらもまた、イエスによって多様な価値観、それぞれに異なる困難や病、悲しみ、喜びの中にある人たちに繋がり、互いに生き合う道へと導かれる。(2025.3.16)