
30年前の地下鉄サリン事件で騒然となった霞ヶ関。続々と救急車が駆けつけるが搬送先が見つからない。もしかすると空気感染する恐ろしいウイルスかもしれない。もし院内感染が起きれば事は重大だ。人命救助のため一刻の猶予もない判断が求められる局面で「すべての患者を受け入れる」英断を下したのは、当時の聖路加病院院長、日野原重明さん。牧師の子に生まれ、105歳まで現役の医者であった彼は、講演で「命」はどこにあるか?と聴衆に問いかけた。彼は言う。「命」は、あなたの「時間」のことである、と。「時は金なり」と言うように時間は貴重で無駄にはできない。しかしそれ以上に尊く大切なのは「命」である。イエスは一刻の猶予もなく、先を急がねばならない途上にあって突如紛れ込んできただ難病の女性のために足を止められる。時間を使い、彼女の人生を知ろうとされる。周囲の人々はいらだち、無駄な時間と思えたかもしれない。けれどもイエスは彼女の時間を彼女の尊い命として、人生として大切にされ、重んじられたのだ。(2025.4.6)